(その3からのつづき)
遣太が目を覚ましたとき、部屋は薄暗くなってた。
アパートの周囲は生活の気配がしていた。時計を見ると7時をまわっていた。
帰宅してきた住人の、車を駐車する音がしている。
胸にまかれたサポーターで息苦しい
「左奥の肋骨がかるく折れてるか、ヒビが入ってると思いますねぇ。この部分ははっきりとレントゲンには写りにくい所なんですよ。」
レントゲン写真を見ながら医者は説明を続けた
「まあ、たいした骨折ではないから、サポーターで固定しておけばくっつきますよ」
看護婦がサポーターを巻いてくれた
胸を一周してマジックテープで止めるものだ
「仕事はできますか?」
「デスク・ワークぐらいならいいと思いますが、どんな仕事ですか」
「それが・・・工場での作業でじっとしていることはないですね」
「それだと止めたほうがいいでしょう。安静にしていないと治るのも遅くなりますしね」
医者にそういわれ、遣太は内心喜んだ。
休む大義名分ができたのだ。
いい機会だから、ちょっと休もう。いやな社員の久山の顔も見ないですむ。
部屋へ戻ってから、社長の河合に連絡した。
「社長、やっぱり折れてました。」
昨日、休暇をとって病院へいく旨を伝えておいたから、いきなり切り出した。
「そうか、仕事はできそうか?」
「それが3週間は無理だそうです。なのでお休みさせてください」
「そうか、ハイハイ」
なんとなく冷たいが、派遣の会社なんてこんなものだ。
もう次の補充の人間のことしか考えてないだろう。
電話を終えると急に眠気がしてそのままベッドへ倒れこんだ。
ベッドの上で横向きになり左手で胸をおさえ、右手でささえてなんとか起きた
明かりをつけると空腹を覚えた。
冷蔵庫の中にはビールとハムがあった
「明日から休みだ!」
ちょっとした開放感からか、缶ビールを3つも空にした。
テレビを見ながら焼酎のロックを3杯のむと、ちょっとほろ酔いになったが、さすがに飲みにいく気にはなれない。
サポーターをすこし緩めてソファに浅く腰掛けていたが、テレビも明かりもつけたまま、明け方また眠ってしまった。
(つづく)
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