(その6からのつづき)
仕事を休み始めてから10日が過ぎようとしていた。
胸も、当初ほどの痛みは感じなくなっていた
遣太はパチンコ通いがすっかり日課になっていた。
遊び好きな性格は生まれつきだ。
仕事を休んで昼間からパチンコをすることへの罪悪感などは、とうてい持ち合わせてはいなかった。
パチンコで勝ったり負けたりの毎日だったが、危機感を感じるような性格ではなかった。
今夜も閉店を告げるアナウンスが流れはじめた
「ちぇっ、終わりかぁ」
残った2箱を交換しても1万円のマイナスだ
いつものようにスーパーで食料品を買って部屋へ戻るとドアのすきまにメモがはさんである。
ガスの集金人がはさんでいったものだ。
請求金額は3か月分で、14,296円だ
この会社はガス代を3ヶ月もためると集金に来る。
そして留守だと1週間以内に払わないとガスを止めると、脅し文句を書いたメモを入れておくのだ。
以前にもガス料金を払い忘れて、止められたことがあった。
「明日、払いにいってこようか・・・」
財布をみるとまだ金は入っている
「えーと、今日は何日だっけ?」
自堕落な生活はカレンダーの存在を忘れさせてしまう。
「あっ、そろそろ家賃も払わないといけないなぁ」
月末までに払い込む金額を考えて、改めて財布を見るとちょっと心細い
「そういやぁ、CD買ったり、デジカメ買ったりしたもんなぁ」
ちょっと使いすぎたかなとは思ったが
「明日パチンコで勝ちゃいいさ」
考えるのもめんどくさくなり、遣太は缶ビールのフタを開け、一気に流し込んだ。
(つづく)
PR