もう20年も前のお話。
香港がまだイギリスの統治下にあったころ、輸入の仕事で香港を訪問した。
中国との国境を侵犯しないように、飛行機が急旋回しながら啓徳空港へ着陸していた時代だ。
ビルの屋上の洗濯物を翼で引っ掛けそうなくらいの低空で着陸していく。
商品の視察でHung Homという街を訪れたとき、昼食をとろうと、とある料理屋へ入った。
そのとき熱い視線を感じたのだ。
そう、このジャケットのように。
刺すように、値踏みされているような鋭い視線。
WE INSIST!/MAX ROACH一目見て日本人とわかるのだろう。
食堂の客の視線が一点に集まる。
「おい、日本人だ」
「こんなところになんで日本人が来るんだ?」そんな会話をしているのだろうか。
気をとりなおして、昼食を注文するが、漢字ばかりのメニューにここが外国なんだと思い知らされる。
注文は漢字を並べた筆談だ。
「飯」は通じなかった。
「湯」はスープのことだった。
牛を炒めてウンぬんとあるので注文した。
焼肉のようだった。
味わうこともそこそこに店を出た。
MAX ROACHはこのジャケットに人種に対する偏見を訴えた
同じ色の肌をしていても、刺すような視線が飛んでくるのは忌まわしい歴史を引きずっているからだろうか。
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