(その7からのつづき)
毎日パチンコ三昧の日々、手持ちの金は着実に減っていた。
重い足取りで車へもどり、ケータイをみると着信の表示があった。
パチンコをしていて気がつかなかったのだ。
平賀からだ。
5回ほど呼び出しをすると平賀がでた。
「すまん、すまん、パチンコしてて気がつかなかったんだよ」
「パチンコどうだった?」
「いやぁなかなか勝てるもんじゃないなぁ。そろそろヤバくなってきちゃったよ。
ところで・・工場のほうはどうだ?」
「うーん、あれから大派さんのかわりにシゲちゃんがきてるよ」
「シゲだってぇ?なんでシゲなんか来るんだ?」
一番仕事が出来ない社員の名を告げられ、遣太は軽い不安を覚えた。
「だんだん仕事がへってきてるし、シゲちゃんも行く場所無いみたい。そのうえ大派さん休んでるし。
社長もやりくりでブツブツ言ってたよ」
よりによってシゲとは・・・プライドが傷つく話だ。
今回のケガはちょっと尾をひくなぁと感じた遣太は「明日、社長に話を入れとくか」と自分に言い聞かせるように言った
「うん、そのほうがいいと思う」
「じゃぁ」
体はよくなっていたが、持ち前のサボリぐせで社長の河合に連絡しなかったことをいまさらのように悔やんだ。
翌朝、9時をまわったころ河合へ電話を入れた。
「おはようございます。」
少しトーンを落とした声であいさつした。いかにも病欠らしくするためだ。
「おう、大派さんか、その後どうだ?」
「はい、骨もくっついたみたいで・・・なんとかだいじょうぶです。それで・・・来週くらいから出ようと思うんですが、どうでしょうか。」
「うーん、代わりの人間入れて、もーまわっちゃってるしなぁ」
シゲのことだ。
「それに最近ちょっと仕事がへってきて、ヒマなんだよ。」
無能なシゲを行かせてどうすんだよ!
「まー、来週でも電話するからちょっと待ってろよ。」
社長一人が取り仕切っているからしょうがない。
仕事待ちモードになってしまった。
派遣の世界なんてこんなものだ。
社員の意思や希望なんてものは存在しない。
言われたところに行き、言われたことをする。
それで生活がなりたつのだ
派遣先から「あんたもういいよ」と断られないかぎり。
(つづく)
PR