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目が覚めて、時計をみると5時だった。まだ外は暗い。
酔っ払ってそのまま寝てしまったらしく、薄暗い部屋には行き着いたレコード・プレーヤーの針が、パチッパチッと規則正しく、レコードの終了を告げていた。
「プレーヤーを止めなきゃ」
大派 遣太(おおば けんた)はソファから起きようとした瞬間、胸に激しい痛みを感じた。
「あれっ?」痛みをこらえながら、遣太の脳裏に昨夜のことがやっと思い出せた。
「確か、帰る途中で転んだんだよなぁ」
「確か・・・信号機の手前だったよなぁ」
胸に手を当てて痛みをこらえながらなんとか起きた。
ひさびさにターンテーブルに乗せたコルトレーンのレコードも聴かれることもなく回り続けている。
遣太はプレーヤーのアームを上げ、なんとかスイッチを切った。
アンプのスイッチも切らなきゃいけないのだが、胸の痛みが億劫さを誘う。
そのままベッドへ倒れこんでしまった。
「今日は土曜日、仕事も休みだし、ゆっくり寝てりゃ直るだろう」
襲ってくる睡魔に身を任せながら、持ち前の気楽さが悲劇のプロローグとも知らずに。
(つづく)
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